多様なメンバーからなるチームの協働が重要なUXデザインにおいて、ファシリテーションの重要性はよく語られています。しかしながら、私の場合、ファシリテーションのトレーニングをちゃんと学ぶ機会は少なく、またその重要性を仕事の中で聞くことはほとんどありませんでした。では、そもそもファシリテーションとは何で、何をすればよいのか、またなぜ必要なのでしょうか。たまたま本屋で手に取った本書は、その答えを示しています。
フラン・リース:”ファシリテーター型リーダーの時代”, プレジデント社, 2002.
原著: Fran Rees: “The Facilitator Excellence Handbook”, Pfeiffer, 1998.
本書は、原書”The Facilitator Excellence Handbook”が、ファシリテーターのレベルを、会議のファシリテーション、チーム活動のファシリテーション、組織全体のファシリテーションの3段階に分けて解説したもののうち、会議のファシリテーションを翻訳したものです。
リースは、ファシリテーターを「メンバーを促しながら、グループを導き、グループの作業を容易にする人のこと」と定義しています。グループで仕事をすることはグループメンバーの人数の増加に従って難しくなり、そこで効果を得るために必要なのがファシリテーションであると述べています。
そして、グループにおける活動の生産性を向上させるためには、誰もがファシリテーション・スキルを持つ必要が有り、ファシリテーションがうまくいくことで、グループの活動がうまくいくようになる、つまりグループに所属するメンバーそれぞれが適切に行動するようになると論じています。
組織に所属するメンバーが、このようなスキルを持つべきであるということについて、日常業務で議論されることはほとんどありません。それだけに、このような視点を各メンバーおよびそのマネージャーが持つことは、必要性が高いと考えます。具体的なファシリテーション技術だけでなく、その意義を明確に述べていることが、本書の優れている点です。
本書の構成は以下の通りとなっています。ファシリテーションに興味のある方はご一読ください。
- 第1部: ファシリテーションとは何か
- 第2部: ファシリテーションの基本スキル
- 質問・発言・要約の技法
- 話を聴く・表情・動作の技法
- 記録を取る技法
- グループを読みとる技法
- コンセンサスを構築する技法
- 第3部: ファシリテーターの手法とツール
- 第4部: 効果的なファシリテーションの設計
- 第5部: 会議の生産性を高める